論理療法による3分間セラピーを３秒で:org-rememberによるプチセラピー

前回、論理療法による３分間セラピー: 3分で悩みを書き出すライフハックと簡易論理療法の紹介記事を書いた.
この３分間セラピーはネガティブな思考を書き出す事がポイントだったが、
今回はこの具体的に書き出す方法を紹介する.

その方法はずばりEmacsのorg-modeの活用だ.
人・環境にあったツールを選ぶ事が大事だと思うが、Emacs使いにとっては、（つまり常にEmacsの前にいるような仕事・生活をしている人間にとっては）
3分間セラピーを行うには絶好の環境が揃っている.

• remember-modeにより瞬間的にメモを開始できる
• さらにorg-remember-templateとして扱うことで、定型フォーマットも瞬時に呼び出せる
• 情報一元化・検索がしやすい

このような、瞬間性・一元性・検索性といったことは、どんなツールでも当然のように重視される時代である。そんな中でもemacs使いは心配する必要はない。
org-mode + remember-modeは,現時点で最適解をもたらす、あまりにも頼もしい見方と言えるだろう.

方法

このorg-rememberを用いた方法で実際に３分間セラピーを行う時は、以下の流れになる.

1. C-c r で３分間セラピー用のorg-remember-templateを呼び出す
2. 3分間セラピーを行い書き出す
3. (-> メモ用の.orgファイルに保存される)

org-remember-templateの使い方は以下を見ればすぐ分かる.
EmacsのOrg-modeでのRemember mode活用チュートリアル

以下の方法では、シンプルな事しかしていないが、やはりこちらの記事も大変参考になる.
org-mode + remember-mode でEmacs内で瞬時にメモをする→コードリーディングに生かす・メモ検索する

template内容については、本書のステップをそのままテンプレート化しただけである.

("Rational-emotive therapy" ?r "* %^{topic} %T :ret: \n%[~/Dropbox/org/tmpl_rational-emotive-therapy.txt]\n")

上記を、.emacs.elのorg-remember-templatesに追加している.
Rational-emotive therapyを省略した、retというタグを付けるようにした.


tmpl_rational-emotive-therapy.txt：

:PROPERTIES:
:Title:
:Belief:
:END:

A. Activating event: きっかけとなる出来事
B. irrational Belief: 理性的でない信念
C. emotional Consequences: 感情的な結果
D. Disputing: 論駁
E. Effective new thinking: 効果的な新たな考え
F. new Feeling: 新たな感情

テンプレートの内容はまだ試行錯誤だ. 後に振り返りなどしやすいようにアレンジしていきたい.

ポケット一原則よろしく、ひとつのファイルに蓄積して行けるといいだろう.
その場だけでなく後から、:ret:タグで検索し、振り返りも行う事で、
自分のネガティブ思考の癖、起きやすい事柄が見えて来て、より客観評価をしやすくなる.
その積み重ねこそが、考え方の修正にとって大事なことだ.

実施にあたってのポイントと展望

この３分セラピーを行うにあたって、以下の点が重要になる.

1. ダンプ速度
2. 文字に興す必要があること

1. ダンプ速度：

ファーストステップとして肝心なことは、
irational belifeが浮き上がったことを自覚次第、できるだけ速く書き出すということだ.
即できない場合、この３分間セラピーをやらなくていい理由を見つけ、
悩む自分を正当化してしまう可能性が指数関数的に高くなっていく.

2. 文字に興す必要があること：

ここでは大方pcの前で過ごす人間にとってはemacsが最高だとしたが、モバイル環境でも行う場合に課題がある.
MobileOrgなどを使うに足りるのだろうか.(今の所モバイル環境ですぐ入力したい程、何かを期待している訳ではないが..)
あるいは、ボイスメモテンプレートのようなものがいいかもしれない.

未来の社会のベーシックスキルへ

そして、上記２つが論理セラピーの肝だという考えを進めて行くと、
究極的にはやはり、思考がそのまま文章化されているというのが理想ということになる.
つまり、メタ記憶のライフログがあればいい.

否定思考に気づく -> 自動ログを見返して抽出 -> 論すう開始

という事が、半自動で行われる事になる.

そこまでいくと、精神の問題がどうこういうよりも最早違うステージの社会と言えそうだ.
そんな社会では、精神機能を最大化する方法は、個々人の一般教養として備えており、
ネガティブ感情への対策としてここまでの事を望む必要はなくなっているだろう.

まだまだ始まったばかりのコンピュータとの協創時代だが、時代が進めば、
これら言わば、セルフモニター・コントロールは誰もが自然に行う普通の活動となる.
人間の苦手な部分をカバーするのだ.

追記 ： 2011/3/5

org-rememberより多機能なモードもcode-readingの著者から紹介されている事に今更気づきました。
org-capture ～Emacs + org-modeで素早くメモをとる新しい方法～
rememberの限定感が開放されている感じ。
是非使ってないとであるが、まずはorg-modeのバージョンアップからしないと。。