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[reading log] "ロボット兵士の戦争" P・W・シンガー

2011-05-26 by ebon | Lavel: ,

震災で暗い話題ばかりの中、お気に入りのサイト、new scientistでは、
日本の原発問題に関して、出動したロボットの話ばかり掲載していたのだった。

テクノ進歩主義的な思想を持つ傾向にある人にとっては危機的な話題そっちのけで、
本気で精度・安定性が求められるという作業に対しての、ロボット産業の現在位置を見れる
ということでテンション上がり目な人もいただろう。

それに触発され、少し前に購入していた、あの「戦争請負会社」の著者による「ロボットによる戦争」
を読んでみた。


本より先に関連動画を

「ロボットによる戦争」というと、NHKでも特集されており、動画の方が有名と思われる。
Youtubeにもおそらく同番組の元であろう動画が存在している。
ただYoutubeにはPart3まであろう物の、1までしか残っていない。

一方、720ページある本書に当然尻込みする。(このP・W・シンガーの前著、戦争請負会社と同等)
しかし心配は無用。我らがTEDにて、著者による同テーマのプレゼンテーションが実施されている。



著者のスタイル

この著者、アメリカ軍部の顧問を勤めている。
また考えをまとめるにあたっての方針として、できるだけ多様な人間、学者から一兵卒までに自ら取材を行う。
かつ軍事技術の歴史的な発展にまで展望を広げて、将来の傾向を描き出すというスタイルを取っている。
ミチオカクなどの書にも言える事だが、アメリカでは重要なポジションにいる人間による一般向けの書、
かつインタビュー等現場からの感覚を重視してまとめあげているような珍しくない。
こうしたタイプの本は、日本ではやはり少ないように思う。

それにも増してさらに、政治家や軍部の人間がSFを好きだなどというイメージが湧かない。
日本では。どうなんだろう、正直思い込みで語っている面は大きい。ただ隣の芝が青く見えているだけなのか、。

こんな人にオススメ

一部Amazonのレビューでもあるように、扱うテーマは戦争の範囲から大きく踏み出しており、文体/内容は少し冗長だ。
この手の未来予想や、あるいは戦争に関して博識であるような場合は取り立て目を引く考察はないかもしれない。

なので、個人的にはロボットよりの未来予想の入り口としてお勧めしたい。全く観点がずれてると思うが。

特異点理論、ロボットによる革命、ブレインマシンインターフェース、人体改変(増強)、オープンソースによるハイテクのコモデティ化...
これらテーマにそれぞれ一章割いているイメージだ。
科学信仰的な未来学が好きそうな人に取ってはなじみ深いテーマが羅列されている。
本書でもキーマンとして出てくるように、カーツワイル、ブルックス、マーティン・リース、グレゴリー・ストック、ナメズ・ロウ..
など各テーマの本をそれぞれ読んだ事がある人にとっては物足りないかもしれない。
ただそれら読んだ事がなくて、この辺の科学者に興味があったり、SF好きな方には文句なくお勧めだ。

関連する本

各テーマについて、戦争xロボットという切り口からの分析はそれほどなされておらず、各テーマの大枠を紹介している程度に留まっている。
そもそも、こういった議論が政府・軍部などの高次意思決定の場でもあまりほとんど出てこないと嘆いているし、これらあまり知識がないことを読者に想定しているため当然の作りとも言える。

ただ、個人的には、上記のような未来学本でもあまり取り扱われない、ロボットの進歩による政治への影響、
意思決定の方法の変革についてもっと詳しく論じて欲しかったと思う。

そんな人にはこちら、「戦うコンピュータ」この本の方が目的に適うはずだ。
本当にロボットによる戦争自体の細部に関する知識、最先端の情報共有・指揮統制システムに
関する概観を覗ける。まだちゃんと読んでいない。

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