多言語話者には、古典愛好家/古典語学習者の割合が非常に多い気がしている。
たまたま私が目にした人間・話がそうだった というように、
サンプルに偏りがあるのは重々考えられる。
ただ、その関連性を目にする頻度から、以下の点、
- 古典を読む事が語学力を養うために有効な手段なんだろうか
- 有効だとしたらどういった性質がそうさせるの
という点が気になっていたので、例を上げつつ少し考えてみたい.
あるいは、古典を読む事というより、”古典語の学習は語学力アップに効果的なのか”
という事が実質の疑問と言えるかもしれない.
ラテン語は、ロマンス諸語の元である言語なため、
他ロマンス諸語を学ぶのに有効というのはよく言われていることだが..
ひとまず以下に古典愛好家である多言語話者の例をあげる.
古典愛好家である多言語話者の例
■ シュリーマンオデュッセイアを暗謡
とのことだが、この叙事詩は口承文学であり何時間とあったような..
有名なシュリーマンの語学学習法、作文+暗唱を軸とした学習法はよく紹介されている.
古典への情熱は思ったほどfetureされてない..
参考:
シュリーマンの多言語習得法
暗記と記憶力(シュリーマンの秘訣)
■ 井筒俊彦
ギリシア哲学、ギリシャ神秘主義と言語学の研究に取り組み、ギリシャ語、アラビア語、ヘブライ語、ロシア語など20ヶ国語を習得・研究した。
旧約聖書、コーランを読破.
アラビア語を習い始めて一ヶ月で『コーラン』を読破したという。語学能力は天才的と称され三十数カ国語を使いこなしたとも言われる
(wikipediaより)
■ Alexander Arguelles
かなり大量の言語に精通しているらしいpolyglot.
語学学習方法や、有名教材のレビューなどをyoutubeに多くアップしている.
公式サイト
Language Study Methodologies
「古今東西の偉大な古典を原本で読むことが、polyglottery(多言語習得)を進めるモチベーションの中心を担っている」
と明言しているように、正しい方法論を元にした多言語学習の推奨とともに、教養としての古典の有意義性を訴えることに、目的があるようだ.
ただ、この人物は、父親もpolyglotであり、幼少期から多言語に触れていたようだ.
■ マルチリンガルの外国語学習法の著者
イタリア文学、オペラを好んだ.
■ アンドレ・ヴァイユ
サンスクリット語、インド文学を好んだ.
■ フォン・ノイマン
6才にして、母国語のハンガリー語以外に、古典ギリシア語、ラテン語、ドイツ語の読み書きができたという伝説を持っている。
大人になってから新しい言語を習得するときの語学学習方法は、
「ディケンズの2都物語の冒頭部分を丸々暗記する」という方法だったらしい.
父による教育においても、現代語よりも、ラテン語・古典ギリシア語の習得を強く意識していた.
参考:
フォン・ノイマンの生涯
雑多に例を上げただけだが、上記のように、多言語話者で、
取り分け古典に情熱を持っている人間は多いと思われる.
語学学習を効果的にする、古典(古典語)の性質とは
気になる問いについて、強引な流れながらも効果的だと仮定してみる.次に、"古典(古典語)のどういった性質が語学学習能力に良い影響をもたらすのか"
という問が出てくる.
その主な性質を3つピックアップしてみよう.
1. 古典語の持つ文法の一貫性/合理性 - 古典語/古典文法は現代語ほど複雑化されていない. - 最低限の文法、合理的な文法が凝縮されている. - そのためこれを学ぶことで、言語における文法のコア感覚を養いやすい(メタ言語能力) 2. 記憶しやすさ - 口承伝達の要素がより強く残っている,長年語り継がれている,詩の形が多い などと言った点から、韻・文章構成等に一貫性がある. -> そのため暗記しやすい -> 言語取得に効果的と思われる暗謡をしやすい 3. 動機促進力 - 原本で読むことにどうしても意義がある. - 何度も繰り返し,同素材に取り組める.
と上げてみたが、2. などはデメリットの方が上回るかもしれない.
短文しかなく構成力が身につかない、音声がない、字が慣れないため負担が多い・・
3. については別に古典特有でもないかもしれない.
というよりそれ以前に、以下のような,多言後話者と古典の関係について言えることが他にも色々考えられる.
- 単に多言語話者は言語一般に興味を持っており、その中に含まれる古典語にも興味を持っていた.
- 同時に複数言語を学んでいる
- そもそも古典を学びたがる人は既に多様な言語を学んでいるため、元から抽象度の高い言語感覚を備えている
となると気になるものは 1 だ. これなどはラテン語の学習目的としてよく紹介されている.
ただこの性質に注目するならば、現代では、人口言語の方がより合致するのでは?と思う.
人口言語を初めの第2外国語とする事は,人口言語の紹介とともに,その学ぶ動機としてよく添えられている事だ.(特にエスペラント紹介などで)
結論らしきもの
これらから、古典に特有の要素があるというよりは、多言語を学習すること/一貫性のある言語を習得することにより、メタ言語能力を養う
という点が言語学習に効果があるという、考えてみればよく言われている事だった気がする.
古典の神秘的な力を期待したいところだったんだけど....
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